さよならの十秒前
「あぁ、これか?」

私の視線に気付いて、先生は鉢植えを軽く持ち上げて見せた。

「スノードロップっていう花だ。かわいいだろ」

「…え?」

小さな白い花。

これが、坂井奈緒の見たかった花。

「知り合いが見たがっていてなぁ。花屋に注文していたから、遅くなったけど今から持って行くんだ」

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