さよならの十秒前
もう一度、頭の中を整理する。

おとといの私の誕生日、クラスメートの坂井奈緒は病気で亡くなった。

そのお通夜で出会った小泉修介という男が、彼女の死に疑問を抱いた。

ひとつ。

彼女の病名を、クラスメートたちが誰ひとり知らないこと。

もうひとつ。

亡くなって以来行方不明になったはずの彼女の携帯から、小泉にメールが来たこと。

文面は、『北の大地』それだけ。

そして今日。

委員長の西野が、思い詰めた表情で『坂井』という表札の家の前に立っていた。

何か、あるのだ。

坂井奈緒の死には、何かが。

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