この世で一番大切なもの
第十二章
「おめでとうリュージ」

月初めの営業日。

ミーティングで、俺が小計十万のノルマをクリアしたことが発表された。

小計二十三万。

ノルマを大きく超した売り上げだった。

「期待してるぜ」

「すげえな~」

「店儲からせてな」

などなど、今まで大して口も聞かなかった人間が媚びてくる。

人間なんてそんなものだと思った。

人間関係すら損得。

悲しすぎる現実だった。

ただ、俺は嬉しかった。

ホストとして認められたことが、期待されていることが。

店に必要とされる存在。

そんな必要な存在であることが嬉しかった。

社会からゴミ、凶悪犯罪者と言われる人殺しの俺が、ホスト。

ホストという職業は、社会の底辺に位置する仕事かもしれないが、世間からは憧れられる存在でもある。

女にモテて金も儲かる。

そういうイメージだからだろうが、俺は正真正銘ホストになれたことが誇らしくてしょうがなかった。

現実はどんな汚い情けない世界だろうがだ。

必ず売れっ子ホストになる・・・。

俺はそう思い、夢と希望で溢れていたが、心はひどく泣いていた。

目を覚ました女が、カードで二十万使ったことを聞いた顔。

あの悲しみの顔は脳裏に焼きついて払えない。

俺はその行為をした罪悪感にさいなまれてしょうがなかった。







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