この世で一番大切なもの
だが俺はそれから上手くいかなかった。

しょっちゅう危険な手段をする度胸もなく、俺は売れっ子ホストにはなれていなかった。

女心は難しい。

機嫌を損ねたり、他のホストに通い始めたり、俺への気持ちが急に冷めたり。

俺は思い通りいかない現実に苦しんだ。

皆の期待を裏切り、落ちこぼれホストになった俺。

自信を失うと、男は魅力的ではなくなる。

俺の自信は砕かれ、ホストへの情熱すら冷めてしまっていた。

そしてホストの現実も知ってしまった。

売れっ子ホストはほとんどが自腹をしている。

ナンバーワンの京介代表も、給料日前は自腹をきりすぎたあげく、一万円持っていないという。

何十万、何百万レベルの自腹。

幹部ホストも見え張って売り上げを上げて、ナンバー入ってても実は借金まみれ。

昔はホストは稼げて楽だったみたいだが、今は違う。

不景気の影響をもろにホストクラブは受けていた。

皆、口をそろえて、

「ホスト続ければ、人生破滅する」

そう言っていた。

だがなぜ、他の仕事をしないのか。

それはホストになる人間は、どうしようもない人間ばかりだからだ。

ダメ人間ばかり。

まともな仕事をできない奴ばかりなのだ。

俺もそうだ。

燃え盛るような情熱は、サーとあっさり消えてしまったのだ。




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