何も言わないで
『ぇー…新任の先生を紹介します…今年から我が校に赴任される一條 大輔 先生です…』
校長の長ったらしい話が一変し、皆は『大輔先生』に夢中になっていた…女子はともかく男子までもが憧れの眼差しで見つめていた。私達は朝会が終わり、教室へと帰った。

やっぱりクラスでは『ウチラの担任がもしや…一條!?』なんて盛り上がっている。

私も何故か胸騒ぎがしていた。
足音が教室に近づいてくるのが分かって皆は素早く席についた。
《ガラガラガラ…》

『えっ…!??』
そこにいたのは紛れもなく、一條だった…
驚いた声をしたのも一條…一條はどぅやら…私をみて驚いたらしい…。

『なにか?』
私が素早く返すと…
『さっきより…数倍…ぃや…かなり…綺麗だ…』
この人は少々頭がイカれてるみたいだ…
『口説いても無駄ですょ?大輔先生』

クラスのチャラ×②代表の金髪が口を挟む。
『ぉっ!金髪!何でだ!??お前も口説いたんか!?桜の精に!』
……はぁっ!?
私が桜の精!??
意味わからんし…

『口説いた×②♪♪でも、ちっとも見てくれないもんなぁ~♪♪』って金髪は私の長い黒髪に触れた。

『そぅね…』
私は明らかに呆れ顔でそぅ言った。

〔はぃ!席につぃて~♪〕

大輔が皆を和ます。

今朝の私との出会いの話だ…
『桜の精が僕の目の前に…』
とか馬鹿げてる話ばかりだが、不思議な事に面白かった。

『2回とも振られた☆』
って大輔は笑って見せた。

多分、この頃が一番楽しくて、何もこんなに泣かずに苦しむことは一切無かった。
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