臆病なサイモン









* * *







俺はこの夜を、きっと、一生、忘れない。









「ご、ごめ…、」


ぴく、と震えた指先が、ダンゴの薄い皮膚をするりと掠めた。

その感触にまた肩が跳ねて、なんかもう、ダサすぎ、俺。

散々泣きわめいて、目ぇ腫らして、しかも、ダンゴに手ぇ、握ってもらいながら。

明日から夏休みなのに、恥ずかしすぎて、立ち直れないかもしれない。


―――でも。





『君ならできるよ、サイモン』


マジで、死ぬほど、嬉しかった。

優しいのか、冷たいのか、どっちかわからないくらいの、一定調の声が、耳から離れない。

タイミングを逃して離せなかった手がまだ繋がっていることに、また情けなく安心してしまう。



…俺、ダメだ。

ダメ、ダメ。

ダメの最上級クラス。


俺、サイテー。

情けなく決壊しちゃって、泣いて泣いて泣きまくって、ダンゴに慰められて。


(本当は、ダンゴの話を聞くつもりだったのに…)


なのに、俺が泣いてどーすんだよ!

オマエに食わすタンメンなんかハナっからねえよ!



バカッ!


俺の、バカ!







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