臆病なサイモン










『……また、あの人を、「オトウサン」て、呼びたい』

条件反射。

恥ずかしすぎる馬鹿みたいな願い事をリアルに思い出して、なんかもう、すげぇ変な顔しかできない。

多分、なんでこのタイミングで出てくんだよ、みたいな、内心思ってもないけど、とにかく不愉快そうな、微妙な顔。


―――しちゃった。




「…、」

それを見た「父親」が、驚いて、すぐに傷付いたような、諦めたような顔になる。

―――しまった、と思った。



「あ…」

ちが、う。


「いや、悪かったな。急いでるところに…」


そうじゃ、ない。


「その人」の傷付いた表情はコウカテキメンで、俺の柔なグラスハートをめちゃくちゃに引き裂いてしまった。

直に伝わってくるその痛すぎる感情が、俺の顔の筋肉まで突き動かして、まるで同じ顔で写った写真を張り合わせてるような状態。




「…気を付けて行けよ」


諦めたように歪む口元が、深い皺を作ってひきつった笑みを作った。

それ見て、なんか、老けたな、なんて。

今、そんなこと考えてる場合じゃねぇのに、それが、すげえ痛い。


―――謝らなきゃ。






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