臆病なサイモン








「…お、す」

掠れた声は間抜けだったが、その予想外の人物は、俺を見てにやりと笑ってくれた。


「夏休み満喫してる、サイモン」

玄関を開けたそこに立っていたのは、俺の脳内をリピートしながらぐるぐる走り回ってやがった同級生―――「ダンゴ」に間違いない。



「…なにしてんの」

来客にこの言い種はどうかと思うが、本気でびっくりした俺にはこれが精一杯だった。


「今日、暇?」

当たり前だけど、ダンゴはいつもの制服姿じゃなかった。

派手くないワンピースに足首で切れたスパッツ?タイツ?を履いていて、足元はオールスターのぺたんこスニーカー。

ヘアスタイルは相変わらずの、お団子頭。


…なんか新鮮。



「ヒマ、です」

ダンゴの質問に応えながら、俺は妙な違和感を感じていた。


「じゃあ、今からちょっと付き合って」


あれ、ひょっとしてこれって。




「映画、観に行こうよ」



デートのお誘い?








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