臆病なサイモン
* * *
「なに観る?」
俺を上目遣いで見上げて、ダンゴはそう尋ねてきた。
細い眼がライトに反射してキラキラしてる。
…だめじゃん。
これ、完全に思春期症候群。
「…なんでもいい、けど」
街中の映画館。
夏休みってこともあって、タメくらいの奴らがわんさか溢れ反っている。
バスに乗って行くのかと思ったら、何故か、チャリで行こうってことになってまさかの青春ニケツ。
女子とそんなことしたことない俺は、もう半分パニックで、いつもより「女の子」らしいダンゴに尚更パニックで、もう半分パニックとかいうレベルじゃない。
そう、パーフェクトパニック・サイモン。
…くだらねぇ。
まぁそれで、いちお、俺だって思春期の「おとこのこ」だし?
カッコ悪いとこなんか見せられねーや、っていうか、まぁ、ダンゴにはたくさん見られてるけど、それとこれとはまた別。
デートでリードできれば、謝るチャンスもたくさあるかも、なんて。