臆病なサイモン
…ピロリロリン。
着信音が鳴った気がした。
今は授業中。
ケイコは慌ててポケットから携帯電話を取り出し、マナーモードを確認する。
ピロリロリン。
手の中で、再び着信音が鳴る。
小さなウィンドウに映っているそれは、着信画面に間違いはなかった。
「―――090、…4、」
通知された番号。
それを復唱して、ケイコはさっと顔色を変えた。
着信があったのだ。
今まさに手にしている、ケイコ自身の携帯電話から―――。
ガシャッ。
ケイコの見開かれた眼がドアップになったところで、緊張しっぱなしだったサイモンは強張っていた肩を痙攣させた。
「…っ、ぁ、ぶね」
動揺のあまり、持っていたコーラの紙カップを握りしめるところだったのだ。
慌ててチェアに備え付けられたポケットに避難させる。
日本のホラー特有の、余計なセリフや物音が省かれた静かすぎるスクリーンが居たたまれない。
情けないと罵られたっていい。
逃げたい。