臆病なサイモン







ダンゴと出会ってから、新しく学ぶことばかりで、ビビる。

今まで、自分がどんだけ硬い殻に閉じ籠もってきてたのか思い返して、怖くなるから。




「…なにも知らないお前が、そんなこと、言うな!」


だけど、今は。

今だけは、殻に逃げちゃいけない。



『ダンゴと友達になりたい―――』

仮にもそんなこと本気で考えてるやつが、今ここで逃げたりしたら。


(俺は一生、本物のダチを作れない)





「…な、なんで、」


我に返ったホンダが、殴られた頬を抑えながら立ち上がった。


「なんでオマエが殴るんだよ!」


よっぽど驚いたのか、ただでさえ高い声を震わせて、裏声で叫ぶ。



なんで、だ?


そんなん決まってる。



『君なら、大丈夫だよ』



俺は、ダンゴと。





「…ダチだからに決まってんだろ!」


腹が立って、もう一度殴りたくなった。

だけどそれはやり過ぎってやつだから、せめて、と苛立ちに任せて地団駄を踏む。

その音にビビったホンダが、周りのダチが、野次馬が、一瞬、静かになった。


その静けさが、俺までも冷静にさせる。





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