恋する笑顔【短編】




二人が笑い合う姿を、ただ見つめていた。



そのうち、自分の中にえもいえぬどす黒い感情が渦巻くのが分かった。






―松永に近づくな―

―松永の名前を呼ぶな―


―その男に笑いかけるな―

―その男を見つめるな―






初めて彼女の笑顔を見たときの胸の高鳴りとは違う。



嫉妬で狂いそうな程心臓が脈打った。



だけど同時に、どうしようもないほど切なくて。



ギュッと



胸の奥で何かが音を立てた。





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