恋する笑顔【短編】
いたたまれなくて。
自分がどうしようもなく惨めで滑稽に感じて。
たまらずその場から逃げ出した。
胸の中のどす黒い感情はべったりと芯に張り付いて消えない。
それどころかグルグルグルグル渦巻いて、どんどん歪んだ形になってゆく。
おかしい。
俺ってこんなに嫉妬深いやつだったんだ。
こんなに女々しいやつだったんだ。
なんでだろう。
前にあの二人を見たときはこんな気持ちにならなかったのに。
キュンとする幸せな鼓動を感じることができたのに。
今は松永のあの笑顔が
あの男のものだと
あの男だけのものだと
ハッキリと分かってしまったからこんなに苦しいのだろうか。