恋する笑顔【短編】
後ろで、ケースケの「おいっ、コウタ!?」という声が聞こえたけど、無視して足を進めた。
ケースケも、女も、戸惑っているようだった。
それもそうだろう。この間までの俺なら、あのまま女の唇を受け入れ、ディープキスでもして、足腰たたせなくしてる。
それどころか、そのまま授業をサボって、あの女とラブホにでも行っているところだ。
なのに、今日、女に誘われた時、少しもムラムラしなかった。
むしろ首に回された手が、擦り寄せられた太ももが、迫ってくる艶やかな唇が
気持ち悪く感じた。