さうす・りばてぃー
 それから見舞いの花を買った俺たちは、電車に乗って隣の駅へと向かう。

 花はもちろん菊の花――――ではなく、黄色やピンクの花で彩られた、きれいな花束だ。

 病院は、学校と俺たちの住む場所の中間にあった。電車で一駅。

 まずまず、近い場所だ。ここなら、気軽に見舞いに行けそうだ。

 時刻は午後二時。昨日と違い、正面玄関が開いているので、そこから堂々と進入する。

 俺たちは達也の病室を聞き、4階へと上がった。

 俺たちが病室に入ったとき、達也はベッドに横になっていた。

 目は開いているので、寝ているわけではないようだ。

「ちわー。見舞いの宅配便です」

 俺が言うと、達也はこちらを見て笑顔になり、起き上がろうとした。

「いいから、無理せず寝てろ」

 言葉でそれを制止する。

「具合はどう?」
 穂波が聞いた。

「ぼちぼちかな。まだちょっと熱があるけど」

 病室には4つベッドがあり、そのうちの一つにお年寄りの男性が寝ていた。

 もう一つは、6歳くらいの男の子が占拠して、小さなテレビを見ている。残りの一つは空いているようだ。

「昨日はびっくりしたぜ。いきなり倒れるから」

「すまん、すまん」

 達也は笑いながら言う。この分だと、大したことはなさそうだ。

 俺たちはそれからしばらく談笑した。

「さて、あまり長居するのもなんだから、そろそろ失礼するか」

「そうだね」

 俺の提案に、穂波が同意し、二人は立ち上がった。

「悪いが、俺は明日から実家に戻るので、見舞いにはこれん。寂しくて泣いたりしないようにな」

「バーカ。まあ、二日もすれば退院できるだろうから、心配しなくていいよ」
 達也は笑いながら言った。

「それじゃ、お大事にね」

 穂波は言いながら、小さく手を振る。俺たちは、達也の病室をあとにした。

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