さうす・りばてぃー
 帰り道、穂波が俺に聞く。

「ゆうくん、明日帰っちゃうんだ?」

「ああ。一応年末くらいは帰って来いって、親がうるさいんでね」

「そっか。いいなあ」

 穂波はつぶやくように言った。その一言に、俺は重いものを感じた。

「ま、寂しかったら、いつでも電話してこいよ」

 何の励ましにもならないことを知りつつ、俺はそう声をかけた。

「うん、ありがとう」

 穂波はそう言って笑った。その笑顔が、どこか寂しげな気がしたのは、俺の気のせいだったろうか。

 アパート前で穂波と別れ、部屋に入ると、いきなり部屋のチャイムを鳴らす者があった。

 そして、十秒後に、もう一回。

 この間の置き方は、一人しかいない。しかし、念には念を入れ、インタホンにでてみる。

「何者だ、名を名乗れ」

 高圧的な態度に、相手は面食らったようだったが、少しして返事を返してくる。

「えと、見由です」

 予想通りだ。

「他には誰もいないだろうな?」

「はい、私一人です」

 俺は玄関に行き、のぞき窓から外を見た。誰も映らない――見由の身長は、もともとのぞき窓より低い――。慎重に、ドアを開ける。

「入れ」

 俺は少しだけドアを開き、見由を迎え入れる。そして、彼女が入ると同時にすぐドアを閉め、厳重にロックした。

「あはは、そんなにおどおどしなくても大丈夫ですよ。星空さんなら、さっき実家に帰りましたから」

 見由は笑いながら言う。それを聞いて、ほっとため息をついた俺だった。

「ていうか、一応私も被害者なんですけどね」

 見由はにっこりと笑う。怒っているのかそうでないのか、その表情からはうかがい知ることができない。

「はじめに言っておくが、俺は謝らんぞ。犯人じゃないし」

 実は思い切り犯人なのだが、あえてそれを言う必要はあるまい。俺には黙秘権がある。

「それは別にいいですよ。何も怒ってないし」

 表情を変えぬまま、見由が言う。俺を責めに来たのではないらしい。

「そうか。で、何か用か?」



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