さうす・りばてぃー
「ま、それにしても、昨日はすごかったな」

「私、お兄ちゃんにも絡んでましたか?」

 不安そうな顔で、見由が聞く。

「ていうか、俺が一番絡まれた」

「ごめんなさい」

 本当に申し訳なさそうな顔をして、頭を下げる見由。

「いや、別にいいけどさ。あんなに飲むなんて、なんかあったのか?」

「えっと……」

 言いづらそうにしている見由。

「まあ、言いたくなかったら言わなくてもいいけど」

 俺は言ったが、その言葉とは反対に、見由は自分から聞いてきた。

「誰にも、言いませんか?」

「言うなと言われれば言わないぞ」

「言っても、笑いませんか?」

「笑うなと言われれば笑わない」

 真剣な顔で聞いてくる見由。俺も真剣に答えてやった。やがて見由が、重い口を開く。

「実はですね、昨日、テストの結果が発表されたじゃないですか。それで、穂波さんに抜かれたのが、ショックで。ちょっと、飲みすぎてしまいました」

 恥ずかしそうにつぶやく見由。俺は、ちょっと面食らった。
 次に、笑いがこみ上げてくる。

 我慢するつもりだったが、無理そうだ。顔の筋肉が緩むのが、自分でもわかる。

「笑ったじゃないですかー」

 見由は約束をあっさりと破られて、怒っている。

「いや、悪い。なんだ、もっとすごいことかと思えば」

「私にとっては、重大なんですよ。一生懸命勉強してるのに、あっという間に抜かれちゃったんですから」

 すねたように言う見由。俺はその見由の頭をしゃかしゃかと撫でた。

「悪かった、悪かった」

「もー」

 見由はまだふくれている。たぶん、この子なりに真剣だったんだろう。


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