さうす・りばてぃー
「まあ、全然勉強してない俺に抜かれたらショックかも知れんが。穂波も、あれで一生懸命勉強してるんだ。許してやってく
れ」

「だって、今まで、全然ランク外だったじゃないですか。短期間の勉強で、あんなに一気に上がってこられるなんて。勉強は積み重ねっていう私の持論が、崩された気分です」

「ん……まあ、あいつは特殊だ」

 俺は言うが、まだ納得できていない様子の見由。

「見由だって、ベスト10に入ったじゃないか。たいしたもんだよ」

「ほんとにそう思ってますか?」

 疑わしげな目で見る見由。どうも、穂波に負けたことが、この子にかなりの劣等感を植え付けているらしい。

「ああ、そう思うぞ。万年平均以下の俺にとっては、うらやましい限りだ」

 これは本音だ。人より何かしら優れていることがあるというのは、すばらしいことだと思う。たとえそれが一番じゃなかったとしても。

 俺が言うと、見由はようやく笑顔を見せた。

「ありがとうございます」

 だいたい、何か頑張れるものがあるだけでも、たいしたもんだ。

 俺はそう言おうとしたが、やめにした。それは、きっと彼女が求めている発言ではないだろうから。彼女にとっては、頑張ることは当たり前のことなのだろう。

 彼女のそのひたむきさが、俺にはちょっとまぶしかった。いつか知がそんなことを言っていたことがあったが、たぶんあいつも同じことを感じたのだろう。

 見由は、俺たち六人の中で、一番の頑張り屋さんだ。


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