君に許しのキスを
ベッドに身体を預けたまま、大きな瞳をぱっちりと見開いて、俺の方を向いている。

まるで汚物を見るかのように、顔を歪ませて。


それもそうか。
彼女にとって俺は、見ず知らずの男だ。
しかもうら若き乙女の部屋に、彼女から見たら勝手に上がりこんでいるのだ。
それは不審者扱いもされるだろう。
そう思い、俺はまだ目覚めきらない口を開いた。

「俺、土屋周の、あんたたちの先生の友達で、倉嶋洋平って言います。
昨日のこと、覚えてる?
あんたが周に飲み物ぶちまけたの。
あの場に俺、いてさ。
あの後あんたが倒れたから、皆でここに連れてきたってわけ。」


俺は自己紹介と、事のいきさつを説明した。


少し早口だっただろうか。
わざとらしかっただろうか。
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