君に許しのキスを
やがて玄関の扉が開くと、洋平が入ってきた。

それから少し間を置いて、沓宮も部屋に入ってきた。
俯きながらも、しっかりとした足どりで洋平の後を付いていく。



俺は、さっと村西から身体を離した。
またパニックを起こしてはいけないと、咄嗟に思ったから。



村西は、身体を引き離されたことに驚いたのか、俺の顔を見た後、辺りを見回し、沓宮に気付いた。


彼女は、俯いたままの沓宮の元へ走り寄り、抱きしめた。
沓宮は何の反応も見せなかった。


誰ひとり、言葉を発することはなかった。
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