君に許しのキスを
ふと脇に目をやった。
もうすぐイルカショーが始まる時間なのに加えて、
大概の人達は、様々な種類の魚たちが泳ぎ回るメインの水槽の方にいる。


再び彼の顔の方に目をやると、
その真摯な眼差しに、心臓がドクンと大きく跳ねた気がした。

彼とふたりきりになることはこれまでも何度かあったけれど、
その時の怒りや緊張とは違う何かが、
心臓を激しく打たせている気がした。


ゆっくりと、彼の顔が近づいて来る。

けれど一瞬、
グラリと、
知らない男の姿が、
彼の姿と、
重なった。
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