君に許しのキスを
お母さんは、あたしを見て、心配そうな、不安そうな顔をしていたけれど、
あたしが倉嶋さんに背負われたまま自分の部屋のベッドに寝かされるのを見届けると、

「ゆっくり休みなさい。」

それだけ言った。



それからあたしは一人で、今日のことを反芻した。


水族館でのこと。
妃奈ちゃんが言ったこと。
倉嶋さんが言ったこと。
先生が言ったこと。

あたしが言ったこと。


あの話を聞いて、すべて思い出した気もするけれど、そうでもない気もする。


その出来事が、自分の身に降り懸かったものである、という実感がない
現実味が、まったくないのだ。
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