君に許しのキスを
確かに、そんなことがあった。

あたしはあの日まで、普通の中学1年生として生活していたし、
その後は保健室に通っていた。

その辺りのことは、ぼんやり思い起こせる。


けれど、肝心なところが、全くあたしの中にない。


それは、脳が未だに思い出すのを拒否しているのか、
それともただ単純に、年月が経って忘れてしまっているのか、わからない。


妃奈ちゃんのことを憎いとか、許すとか、許せないとか、
そういうのの主体に、あたしがいる、というのに現実味がない。


妃奈ちゃんがあんなに悔いて、謝っているなら、許してあげれば良いじゃない、
そう他人事のように思ってしまうだけだ。

そうだよ、神様。
許してあげて、って。



ただ、倉嶋さんに対しては、何故だかそうも思えなかった。
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