君に許しのキスを
妃奈ちゃんは、あたしに気付かれまいと、ぱっ、とあたしの方に向きなおり、笑って何か話している。

あたしもそれにあわせて、勢いに任せ何か喋る。


だけど、彼女はどこか上の空。
あたしもそんな彼女の様子をうかがうほうが、会話よりも重要。



なぜだろう。
中学からの親友だという彼女に、なんとなく不信感を抱いてしまうのは。

いつからだろう。
この苛立ちは。


彼女は何か、大切なことを隠している。
そんな確信がある。

あいつへの気持ちも、そうだけれど、それ以外にも、何か。

とても大切なことを。
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