君に許しのキスを
「…凛、お店、変えようか?」


妃奈ちゃんは不自然に笑ってそう言った。
心なしか、声も震えている。

嘘つき。
本当はここに居たいくせに。


そう思って、また向こうに目をやると、今度は2人共こちらを見ていて、完全に目が合った。


あの男は少し驚いたように、滑らかに視線を動かす。

もう一人、ふんわりとした茶髪の男が、涼やかな瞳で、まるで動じず、こちらを見続けている。


いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ。
きもちわるいきもちわるいきもちわるいきもちわるい。



あたしは気付くと、席を立ち彼らのほうへ向かっていた。
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