週末の人魚
ピント
食事を済ませ、六畳間ベッドの上に寝そべり天井にカメラを構える。
壁の向こう彼女の浴びるシャワーの音が聞こえる。
喧嘩のあと彼女は決まって先に謝ってくれる。
大事なカメラの雑誌を捨てられたことなど、もうどうでも良かった。
自分の大人気なさがカメラのピントを狂わせた。
扇風機の前で涼んでいる彼女の寛大さに感謝しなければ。
バスタオルを体に巻きモデルのポーズをきめている彼女にシャッターを切った。
今度の休み海でも行こうか?
オッケーと彼女は嬉しそうに返事をした。
夏ももうじき終わる。
彼女へのせめてもの償いのつもりだった。
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