魑魅魍魎の菊



菊花は幾分、歳の割には冷静な性格だ。

生活環境のせいなのか、とにかく理由は不明だが、表裏がはっきりとした性格ともいえるのだ。



表はクラスの中間的(と思っているのは私だけだと思う)な立場で明るい性格、裏は後ろめいて存在意義を失いかけている少女である。

大人や友人、今日日の高校生に言わせてみれば「ただの思春期」と10人中10人がそう答えるだろう。


そんなことを言われてしまえば、そこまでの話なのだが…


彼女《菊花》には超越とも言える、人間をも凌駕する"能力"が秘められているのだ。



本人も《他のなにか》も、人間ではないかもしれないと考えている。
自分は一体何者なのか、何の為に生まれたのかと…

中学生みたいなことを考えているが、菊花にとっては苦しいモノばかりなのだ。



《他のなにか》も見ていて辛いのかもしれない。
この物語は物語であって物語ではない。我々が知らないだけなのかもしれないだけの話。


菊花はいつも輝きたかった。綺麗でいたかった。陽のある、温かみのあるところで伸び伸びと暮らしたかっただけなのだ。





『あたしって、何の為に生まれたんだろうね?』

『それを探すのが人生だよっ!』

『えぇ——。在り来たりでヤだよそれ!』




耳に飛び込んで来た会話に思わず私は心の中で賛同した。

そうだ——何の為に生まれたのか。


理解はしているのだ。それを探すのが人生だってことぐらい。
だけどね…
それだけじゃ物足りないんだ、もっといっぱい…


誰かに必要とされたいし、愛されたいんだ。


 
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