魑魅魍魎の菊






《大槻神社》にて、一人の"少年"が美しい青色の着物を羽織って薄暗い本堂の中に坐っていた。


目の前の鏡を見ながら、美しく化粧を施してから——まるで蝶を象ったような面を被るのだ。
その姿はまるで「アオスジアゲハ」である。あまりにも美し過ぎて、吐き気すらしそう。



(……外が賑やかだ)



今宵は祭だ。
楽しそうな子供の声や、お囃子に太鼓の音に胸を踊らしてしまう。あぁ、なんて楽しそうなんだ。



"少年"は青い着物を引きずりながら、部屋を移動する。すれ違う人間たちはとても忙しそうで額に汗を流している。









空は夕闇になり、なんて綺麗で。空が崩れてしまいそうな衝動に駆られるよ。



夜の風、植物の香り、虫の鳴き声が静かに体に染み込む。まるで、私も自然の一部になってしまいそうだ。


辿り着いた裏庭の縁側に腰を下ろせば、






「大槻様……。あまり動き回らないで下さらないで」


白蛇が怒気を含んだ声で私に言い放つ。馬鹿だね、そんな無駄な足掻きをしたって——












「…どうせ直に亡くなる命、ならば"神狩り"をされても致し方ないよ」



面に隠された表情は喜びなのか、悲しみなのか。


 
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