魑魅魍魎の菊
「テメェの惚れた女ならテメェで守れ」
そう言えば、悔しそうに唇を噛み締めて拳をぎゅっと握る白。
「出来るなら…俺だってしますよ。だけど、俺は……若殿みたいに力は持っていない、鏡子をサポートするのだって精一杯なのに——!」
——力が欲しい。
あまりにも切実に欲している、その気持ちは痛い程わかる。
俺は白の帽子の上に手を置き、
「……白、おめーが鏡子好きなのはみんな知っている。"家族"として鏡子は守る。
だが、おめーは"惚れた女"として鏡子守れ」
「わ、若殿……俺は…」
「グダグダ言ってんじゃねぇーよ。お前は幸せ齎す《白狐》だろうが!俺だって自分に精一杯なんだよコノヤロー」
グッと力を込めれば、暴れる白に鏡子は何かを勘違いしているのか「もう!緊張感をお持ちください若!」と怒られてしまった。
鏡子はそんな涙目の白を労って、頭を撫でて上げていた。
だけど、いつか気付くだろう。
己の存在の大きさを。
残酷な末路を辿ろうとも、幸福な末路を辿ろうとも。
人生、まだ長いから良いじゃねぇか。
俺より何百年長生きしてると思ってんだアイツ等。
それなのに恋愛は小学生並、変態、ストーカーは潜んでいるという…。
長く生きているから解ることもある、気付くこともある、忘れる事もある。
人も「目に見えないもの」も愛を紡ぎながら歴史を創るのだ。
そう思うと口端が上がるのだ。