魑魅魍魎の菊

必要性








「加藤さんったらさー。雛先輩のストーキングしなくて良いんですかー?」

「俺そんな犯罪めいたことしてないって言ってるよねェェエエ!!??」

「いや。さっき見かけましたから」



小さく息を吐いた高村菊花は《大槻神社》の竹林に身を潜めていた。妖力により腰まで伸びた髪は一本で結われ、袖のない黒い着物を着用していたのだ。

白い腕当てをし、腰には刀と小刀が携えてある。


ゆらりゆらりと風が吹き、その表情はより一層人間味が失われて行くような気がした加藤であった。


この"少女"に疼く闇を解放してしまったら、きっととんでもないことになるであろうと本能で感じ取る。



(——嫌な予感しかしないよ、玖珂っち…)



本当は玖珂っちと一緒に縁日来ようと思ったが…
菊花ちゃんを発見したので着いて来てみれば、なんてこったい。「魑魅魍魎」の方だったとわ…。


何て運が悪いんだ。




「菊花ちゃん、あの"綾崎"っていう女の子と一緒に来たんじゃないの?」

「綾崎?いんや、他の友達と一緒に縁日に来ているわ。今だって、クレープを食べてる」



ニヤリと歪んだ笑みを俺に向ける菊花ちゃんに、後ずさってしまった。
何だ、この"狂気"。俺の知っている菊花ちゃんはこんな厭らしい笑い方なんてしない。

もっと…明るく純粋に声を上げて笑うんだ。




そう——…





もっと、人間らしい笑い方をするんだ。





「遠くのものを見通せなくて、魑魅魍魎の主が勤まりますか」


 

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