魑魅魍魎の菊


「その点、大槻様は既に諦めているみたいだからさ。すぐに滅したら面白く無いでしょう?」












(大槻殿、良い所に居ました。良い茶を手に入れたので一緒に呑みませんか?)

(おぉおぉ、蓬莱は大層出来た男ですね!全くウチの物もこうシッカリしてくれれば…)

(今宵も美しい天気ですな——!!)




大槻がぎゅっと唇を噛み締め、懐から護身用にと携えていた小刀を抜刀する。

目の前に居る狂気じみた殺気がチクチクと体に突き刺さって、嘔吐すらしそうだ。




だが——いくら、罪を犯した私でも。


この"女"を倒そうと誓ったのだ。どうせ亡くなる存在、ならばこの女を滅してからでも遅くはない。




(——私は厄払いの神、大槻だ!)






「——へぇ、そういう態度取るんですか」

「粋がるな小娘。これでも私は神だ!舐めるんじゃないよ!」





(最後の最後に"神"の自覚を持ったか)




菊花は面の下で無表情になり、再び刀を構え直した。




今宵、誰が消え行くのか。

そんなのは解らないままだ。誰か、"笛"を鳴らして——…


 
< 292 / 401 >

この作品をシェア

pagetop