魑魅魍魎の菊
「何で出会い頭に俺、怒られたのぉぉおお?!」
「今の今まで何処に居やがった!!こっちは大変なんだぞゴラァ!!」
「そ、そうですよ加藤さん!こっちは精神衛生とんでもないんですよ?!」
おいおいおいおい…
何でイノッチまでそんな剣幕で…。
「ま、まぁ……俺は菊花ちゃんと喋っていたんだけどね、」
「「っ——!!??」」
あの娘、どんなに重いものを背負っているのか。
想像すら出来ないよ。
加藤は顔を俯かせながら言うと、穂積がぽつりと何かを呟いたのだ。
「……菊花先輩の所に行こう、」
——じゃなきゃ、きっと何も解決なんてしないよ。
僕を助けてくれた優しい人。そんな人があんな非道なことを平気でしているはずがないんだ。
きっと、何か理由(わけ)があるはずなんだ。
正直言って、仮面で顔が見えなくて良かった。きっと見てしまえば、僕は壊れていたに違いない。
失望したかもしれない。
だけど、そんな感情を先輩に抱きたくないんだ。僕を変えてくれた先輩。
今では友達も沢山できた。人と喋っても吃らないようになったんだ。
(恐いけど、)
それでも、対決しなくちゃいけないんだ。
「——行こう、萩原君」
「おぉ、着いてくぜ」
(俺もあの女を殴らなきゃ、気が済まねぇんだよ)