魑魅魍魎の菊


この鉈はあの堅い竹を毎日切っている鉈だ。青臭さも感じるが、もうそんなのはどうでも良い。



いつも慈愛に満ちあふれている瞳をしているあの瑠璃丸は何処へ…。口元を酷く歪めさせ、笑っている瑠璃丸からは黒い霧のような邪気を感じられた。


それはまるで…全てを静かに浸食するように思えた。これはまずいと感じ取った、神々は瑠璃丸を押さえようとするが!










「——散れ、神ども」




(——スパァアアンッ!!!)




瑠璃丸は一人の神に鉈を振りかざしたのだ。赤い血が飛び散り、滝のように吹き出す血が…



御堂をも穢し、瑠璃丸と大槻の美しい顔をも汚したのだ。色みを失った瑠璃丸は酷く美しく、それに見取れてしまう私はなんて愚かなのか。



「おおおお、己ぇぇええええ!!!!」




一人の頭のような土地神は怒りを露わにしながら、腰に携えていた刀を抜く。他の神もそれぞれ能力を解き放とうとする…


その臨戦状態に瑠璃丸は血で濡れた口元をペロリと舐め上げ、足下に倒れていた神を蹴り上げていた。




「貴様ぁああ!!神を愚弄する気か!!!」

「……る、瑠璃丸止めなさい!!!貴方はそんな男ではないでしょうに!」








「——このように容易く倒れていくのが、神なのか?」



邪気が孕んでいるせいか、本心なのか…
瑠璃丸の声は何処までも冷たく、何処までも熱かった。矛盾しているが、このようなもの解釈次第だ。


 
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