魑魅魍魎の菊



「一体何を仰っているのだ、瑠璃丸」


何の冗談を、と他の神々は大きく笑う。












「答えろ!!!今まで私を馬鹿にしていたのか?!」


その声は刀のように鋭く、その瞳は怒りが籠っていた。物の怪の彼らは感じた、これは「不味い」と——



「…る、瑠璃丸?何を言っているのか…私には、解らないわ」

大槻は口を震わせながら問うた。——何故、誰よりも優しい男がこんなに怒っているのだ。




「——今更しらばっくれても遅いわ!!貴様の勅命で私の家族を殺させたのだろう!!畑も死に……さぞ、楽しい遊戯だったろうに!!」



厄が憑いているから…殺させただと?

貴様は厄払いの神ではないか、ならば何故お前が滅しなかったのか。我々民衆がこのようなことに巻き込まれるのは摂理なのか。反語、いや違う。

そんなことはあってたまるか。何が神だ、我々を助けずにのうのうと生き…酒を交わし、美味い食べ物にだってありつける。



——貧しく、哀れな私を見て楽しかったのか。自分の容姿については自負している、だが疫病神に捧げられる為に私は生かされていたのか。



何の為に、私は生き、仕事をしていたのか。




(……意地でも吐かぬのか、)


大槻は俯いていた。






——そして、瑠璃丸は腰の鉈を抜いたのだった。



(——もう、どうなっても良い)


私も竹と共に散りはててやる。

 
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