魑魅魍魎の菊
菊花は腰に携えた刀に手を掛けながら、自分の「妖力」に当てられる妖怪や付喪神に呆気なさを感じていた。
「鴉丸、少しひとっ飛びしてくれない?何か、変な所に踏み入れたかも…」
私はこの地に足を踏み入れた瞬間から色々と違和感を感じていた。こんな広範囲に結界が張られていることは解るが…
「結界以外の、"ナニ"かでございますか…?」
「うん…。なぁんか、相手の術中に嵌まっているかもしれない」
「うわぁー。キッカのドシっ娘」
間の抜けたような声を出すのは、「吸血鬼・ライアン」。そして蛇骨婆を本当の祖母のように慕っているから——色々とミスマッチだ。
「口を慎めライアン!!菊花様はもっと崇高なお方だぞ!」
「いやいやいやいや…鴉丸、私はそんな大層なもんじゃないし…」
うん、ホントのこと言うと。ただの地味な女子高生ッスから私。学校じゃ「あれ居たの?」ぐらいの存在感だから。
(ん、んぅ?自分で言っていて悲しいかなー?)
「鴉丸、どっちでも良いから早く行く!!」
「はっ!菊花様の為ならこの鴉丸は地の果てまでお供します!」
と、叫びながら夜の闇に消えて行った。——つーか、どうやって反応したら良いのよ。