魑魅魍魎の菊


麗子。僕の愛しい奥さん。
僕はときどきこの力が憎いと思うことがあるんだ。

大好きな君は死んでしまった。
いっそ見えなければ、諦められたのかな?



(白けた顔しないでよー!せっかく良い男なんだから)


そうやって少女のように笑うから、もう一度抱きしめたくなるんだよ。

あの時、逆プロポーズをした男の僕より男らしい君をずっとずっと幸せにするって心に決めたのに。





「市太郎?あの"高村菊花"って娘……正影の彼女だったりするの?」

「うぅ〜ん、高校の先輩後輩だよ」


苦笑気味に答えると、麗子は怪訝そうな顔をした。


「どうしたんだい?」

「……あの娘、どうして——
















背中に黒い煙を背負っているの?」





市太郎の体に戦慄が走った。



純粋そうに首を傾げる麗子に、市太郎は息が詰まった。




(……僕が、視えない…?!)



市太郎は思いを巡らせ、とある事実にたどり着いた。それが本当の事実かどうかはわからない。



市太郎は最高レベルの陰陽師であるが、イコール市太郎が視えないレベルの物の怪とは……




(……ますます、まずい状況になったな)
 
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