魑魅魍魎の菊
正影の刀が"男の指"一本で止められていた。
「…誰だテメェ!止めるんじゃネェよ!!!」
「玖珂の若頭、人間だったら理性で動く事も大切だと思うけど?」
首切れ馬を後ろに従えた《鬼》が居た。突然現れた参戦者に苛立を覚えた正影。
そして、今滅そうとしている女を庇った事に強く怒りを感じた。
「退け!!陰陽師の名の元に俺はこの女の悪行三昧を滅する義務がある!」
「じゃあ聞くけど、その義務って何なわけ?責任とは直結しないと思うけど」
呆れたように笑う「鬼」は百鬼夜行の頭を庇って、俺の刀を弾き飛ばすのだ。
(なんつー力だ!)
「"俺の家族"が理由も無く滅されているんだ!この女に罪を負わせる権利がある!」
「ん〜困ったな、こりゃ」
「——良いわよ、やっち。私だって見境無くやった罪がある」
「…菊花ちゃん」
何者だあの鬼は…。
スザクが居れば、だがスザクもこの女に!!
余計に怒りが増幅させれる正影。刀を再び菊花に向けた。
「《玖珂の若頭》、……刀を収めよ」
「どの面下げてお前のような奴に頼まれなきゃいけないんだ。第一この女はスザクさえも!!」
首切れ馬がヒヒーンと鳴くがそこは鏡子に任せるとして…
俺はこの女を倒さなくちゃいけねぇ。
「夜行、後は説明は頼むぞ」
「ちょっと菊花ちゃん?!」
ゆらりと前に出て来た菊花の顔色は蒼白く、殆ど本能で立っている状態だった。
それでも刀を構えるその姿にゾッとしたものを覚えた《夜行》と呼ばれる妖怪は固唾を飲んだ。