魑魅魍魎の菊



最後の力を振り絞って、妖力と"陰"の力を刀に注ぎ込んだ菊花の瞳は飢えた獣ようになった。


「フンッ、そんな目も出来るんだな——だか、お前はここで滅して地獄に堕ちるのだ!」



正影は一気に菊花に入り身し、刀を受け止められるが"光の力"を相手に流し込みながら薙ぎ払う!



「ぐっぁあっ…!」

そして、正影は倒れた菊花の上に馬乗りになって渾身の力で左頬を殴ったのだ。


「きゃあぁっ——!」

「菊花ちゃん!!——女に手を上げるなど、若頭どうかしているぞ!」







「夜行黙っていろ!!これは私と玖珂の戦いだ!!!」





空間を引き裂くような声で菊花は血を吐き出しながら叫ぶ。口の中が思い切り切れて鉄の味が広がるのだ。


その威圧感を含んだ声に夜行は押し黙ってしまう。これは「統べる」者にしか出せない"気"だ。

後ろの白狐や付喪神達も動けなくなっている。





「こんなことで屈する私じゃない!男も女も同等の存在、それを理由に負けを喚くような女にだけは私はなりたくない!!





良いか、玖珂の若頭!私を本気で滅したいのなら完膚無きまでに地獄に叩き付けろ!」




地味な顔なのに…




なのに、一瞬だけ見惚れてしまった俺が居た。



何故だか「強いモノこそ美しい」という言葉が浮かんで来たのだ。俺は懐から赤い紙を取り出して女の前に翳したのだ。

 


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