刹那の憂い(セツナのウレい)
彼の座った位置は、あたしの、他人と取りたい距離より、近い。

けど、刹那限定で許せる距離だ。

というより、もっと近くても嬉しいかも。


「刹那さんは、何してるの?」


何だろ、この、感じ。


「学校の帰り」


「大学生だっけ?」


「そう。それで、多分あんたの一つ年上だけど、頼むから、その、刹那さんっていうのはやめて欲しい」


「刹那さま、とか?苗字、覚えてないし」


「誰がさま、だ。

呼び捨てでいい」


ふうん。


「刹那?」


「そう」

わかった。

こんなに可愛くてカッコいいのに、こっちに緊張させない雰囲気を持ってるんだ。


「かっこいい名前だね。

でも”刹那主義”みたい」



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