とおりゃんせ2~日村令子の場合~
公園を覆っていた白い膜が その光の触覚を子供たちに伸ばしたかのように 子供たち1人1人を白っぽい光のすじでとらえ その身体を包みだしていた

その光に包まれると 子供たちはその身体を発光させるようになったのだ


その光景は 夏の蛍が暗闇でその光を灯し 強めたり弱めたりする様子を思い出させた


「無眼耳鼻舌身意無色聲香味触法

無眼界乃至無意識界無無明亦無無明盡

乃至無老死亦無老死盡無苦集滅道・・・」


光に包まれ 光を放ちだした子供たちは

徐々にその身に負った深い傷や腐敗を修復していった


さきほどまで涙を流していた彼らは

今では母親の体内にいる赤ん坊のように光に身を任せ 穏やかな顔になっていった

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