とおりゃんせ2~日村令子の場合~
親に抱きしめてもらえなかったその悲しさ 悔しさ 切なさ・・・

また・・・

それを叶える事の出来なかった 恨み 執念 未練 無念・・・


この世の苦しみだけを固め ずっと公園に居た子供たちは

やっと・・・

はじめて『愛』というものをその魂に感じている・・・

その安堵の表情が そう物語っていた


由里の足下で泣いていた子供も やはり白い光に包まれ身体からはうっすらと発光し 今は石も縄もなく やすらかな表情で光りに身を任せていた


「究竟涅槃三世諸佛依般若波羅密多故

得阿耨多羅三藐三菩提故知般若波羅密多・・・」


『あなたはどうするの・・・』


共鳴していた声の片方が由里に語りかけてきた

令子は変わらずお経を読み進めているが間違いなく彼女が話しかけていることは由里にも分かった


「どうする・・・って・・・」



『この子たちと一緒に『生』を終えた後の魂の行くべき所へ向かう?

それとも・・・元の世界に戻る?どうしたいの・・・』


「それは・・・それは勿論戻りたいよ!

私・・・まだ16だよ!やりたい事も沢山ある!

やり残したこと沢山ある!もし戻れるなら絶対に無駄に生きたりしない!!

この子たち見て分かったの 無駄な命なんか無いんだ!って!

だれかが無駄だと思って 捨てた命でさえ・・・そこには・・・そこには・・・

なんか・・・うまく言えない・・・」


< 23 / 62 >

この作品をシェア

pagetop