とおりゃんせ2~日村令子の場合~
『無駄だと思って捨てた命でさえ 誰かを『救う』為の命だった・・・そう言いたいのかしら』
由里のうまく言えない言葉を令子はフォローした
「そ・・・そういうこと・・・かな・・・」
由里は頭の中がまとまらず 曖昧な返事になってしまった
「是大神呪是大明呪是無上呪是無等等呪能除一切苦
眞實不虚故説般若波羅密多呪即説呪曰・・・・」
『もし・・・あなたが元の世界に戻る事を願うのなら・・・
その想いを強く放ちなさい・・・
しかし これだけは言っておきますよ
あなたが『生きる』ために『死なせてしまった』命の重さは計り知れないモノだということ…
それを背負って生きていく覚悟がなければ いずれあなたには同じ死に方・・・つまりこの世に未練の残る死に方でしか人界を去る事が出来ないということ
そして亡くなった子の分まであなたが『生きる』という事は その分の喜びや楽しみも味わう代わりに それ相応の苦しみや悲しみも背負って生きるということ
自分1人分ではなく2人分の人生を背負って生きる覚悟がなければ あなたにはとうてい幸せとは無縁としか呼べない人生しか待っていないということ
その事すべてを受け入れて生きていく覚悟はありますか・・・』
由里は令子の言葉が直接脳に入ってくるように その言葉を受けた
由里には考える余地は無かった
全てを受け入れてでも 再び・・・皆の元に帰りたい・・・
厳しく苦しい練習の中でも 仲間と励まし合い成長した日々
それを楽しみに 毎朝の早朝練習に間に合うようお弁当を作ってくれる母
試合には必ず応援に来てくれる父
「姉ちゃんガンバレ」とエールを送る弟・・・
今こそ・・・今こそが・・・皆の期待に応える時だ