とおりゃんせ2~日村令子の場合~
「おう ただいま」
「あぁ・・・母さん・・おかえり」
店の奥からひょっこり顔を出した男性は 紗英の説明通り特にこれといって特徴のある男性ではなかった 彼の小さめの目だけは この少し暗がりなお店の中でもキラキラとしていた
「おまえに客じゃ」
老婆は由里を振り返って その顎で由里を指した
つぶらな男性の瞳が由里を捉えた
由里に緊張が走った
「あっ・・あの・・・金子さん・・・ですよね
こっ・・このまえは・・・助けていただいて ありがとうございました!」
由里は 肩幅に開いていた足をキュッと揃え 由里の母親が若医師にしていたように 金子さんに深々と頭を下げた
「あぁ あの時の・・・!良かったね 元気そうじゃない」
金子はそう言うと にっこりと笑ってみせた
「はいっ!お陰さまで・・・ピンピンしてます!!」
「そうか・・・有り難う・・・生きてくれて・・・
オレにも・・・誰かを助けるチャンスを 神様が与えてくれたんだ・・・
そうでなければ・・・オレは・・オレは・・一生・・自分を責めるだけの人生を送るしかなかった・・・」
金子は そのつぶらな瞳をうるませながら 由里にそう語った