とおりゃんせ2~日村令子の場合~
「それは・・亡くなった妻が一番気に入っていたモノだったんだ・・・
オレにとっては形見のようなモノでね・・・売り物ではないんだ・・
しかし 毎日それを見る度に・・良枝の果たせなかった思いで・・・オレは胸が張り裂けそうになるんだ・・・」
金子はクリスタルを見つめながらそう言った
「果たせなかった・・思い・・?」
由里がそう言うと その言葉に対し返事をしたのは再び2Fから下りてきた金子の母親だった
「良枝はねぇ 子供が出来なかったんだよ! アタシに一言も相談しないで勝手に子供を堕ろした事があってね バカな女だよ・・・ あの時・・・あの時・・・なんで ウゥ・・・なんでアタシに言わなかったんだよ アタシに言ってくれてたら・・・面倒みたのに・・・ウッ・・ウッ・・ アタシだって抱いてみたかったさ 孫ってのをさぁ・・・」
金子の母親は シワだらけの顔にもっと深いシワを作りながらこぼれてくる涙を何度も手でこすっていた
「何度も言ってるじゃないか!良枝は母さんに気を遣ったんだよ あの頃は母さんも仕事で随分認められて大事なポジションにいたじゃないか そんな時に・・・どうしたら赤ん坊の面倒を見てくれ…なんて言えるんだ まさか・・・まさかオレたちも考えもしなかったんだよ・・・良枝に子供が出来たのがあの1回きりだったなんて・・・良枝のせいじゃないんだ!」
「そんな事は分かってるさ・・・分かってるんだよ・・・今更・・・そんな話しした所でさ・・・何も手に入りゃしないってコトくらい・・・」
『やっぱり・・・やっぱりそうだったんだ・・・良枝さんも子供を堕ろしてたんだ・・・』
金子は再び由里に目をやった
「すまないね・・・みっともないところを見せてしまって・・・
キミの救世主が こんなに情けない奴で さぞがっかりしただろう…」
金子はそう言いながらも 優しく微笑んでいる
「いえ・・・そんな・・・」
由里は迷った
自分の意識が無い時に見た夢の話し・・・
それをするべきかしないでおくべきか・・・