とおりゃんせ2~日村令子の場合~

『良枝さん・・・どうしたらいい?』



由里は心の中で一度も会ったことのない良枝に話しかけた

猫足のキャビネットの上に飾られている 聖母の置物を見ながら・・・



「それ・・・気に入った?」



金子は そう言いながら由里に近づいた



「あ・・はい・・・なんだか・・・

忘れちゃいけないコトを いつも思い出せてくれるような・・・そんなカンジがして・・・落ち着きます・・」



金子は由里の隣に立つと 由里と並んでその置物を眺めた



「そうなんだ・・・」



「はい・・・実はわたし・・・最近子供を堕ろしたんです ・・・親も・・知りません・・・」



金子は『えっ?』という表情をして由里を見た様子だったが 由里は そんな金子の視線を避けたまま置物を見ながら喋り続けた



「わたし・・・自分が死にそうになって・・・はじめて命の大切さに気が付いたんです

自分が死にそうな時はあんなに悪あがきしといて 自分で作った命でさえ・・他人事みたいに平気で死なせてしまって・・・

そんな子供が どんな思いでいたのか・・・知る事が出来ました

倒れた時の夢の中の出来事が わたしにそれを気付かせてくれたんです

死なせてしまった子供の分の苦しみや悲しみも背負って生きていくって・・・約束したから・・・私はまた・・・こうやって生き返ることが出来たんです

だから・・・大切なコト・・・忘れたくないんです・・

だから・・・この置物が気になるんです・・・」



「そうだったんだ・・・キミも・・・苦しんだんだね・・・」



金子はウンウンというように 何度も首を縦に振りながら由里の話しを聞き終えると そう言った

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