しなやかな腕の祈り
『今仕事だって???』

「うん、そうそう仕事。
詳しく言えば仕事中止になったから親方たちと飲みに来てるかな」

『あ、そ!!!分かった!!また電話する』



お母さんはそれだけ言うと一方的に電話を切っていった。






明らかに酔っていた…






席に戻ると、あの短時間で親方は完全に出来上がっていて大騒ぎしている。



「おい多嘉穂!!!飲め!!!」



いつもこの台詞。



「無理ですよ親方。あたし今日夜練習だから」

「何だよお前はぁ…」



酔った親方は質が悪い。

練習が無ければあたしも飲むけど、今日は本当に練習がある。



「何だっけか、お前のやってる…」

「フラメンコ」

「そう、フラミンゴ!!!」

「親方、フラメンコです」



つまらないギャグも、つまらない突っ込みも酒の勢いで楽しくなる。

カウンターの向こうで絵里ちゃんも笑っている。

今考えると、2人とも親のいなかった時に、あたしを支えてくれた身近な人間っていうのは啓太じゃなくて親方を始めとするこの組の人達だったんだろうと思う。
< 77 / 137 >

この作品をシェア

pagetop