しなやかな腕の祈り
その様子を、隆弘が真面目な顔でじっと見つめている事を、あたしは知っていた。

隆弘は…絵里ちゃんに振られ続けている。

軽く5回は。



「あれっ!?何や、多嘉穂帰ってきてたん」



生ビールを両手に3つずつ持って、絵里ちゃんはあたしに話しかけてきた。



「一昨日帰ってきた。」



そう言うと絵里ちゃんはニコッと笑ってまた厨房へ戻っていった。



「可愛いなぁ…絵里」



隆弘が切なそうに呟く。



「話しかけなよ!!!」



肘で隆弘を小突くと、もっと切なそうな顔をして



「全部の女切るまで話しかけるなって言われた…」



と、打ち明けてきた。

阿呆だ。コイツ。



「じゃあ切れっての!!!」



いつもこうだ。

隆弘の相談には、あたししか乗れない。

あたしの相談にも、隆弘が一番的確な事を言って来てくれる。

ちょうどその時、携帯が鳴った。





知らない番号。






「もしもし???大屋ですけど」

『お母さんだよ-う!!!』

「あぁお母さんかぁ」

『そういえば、あんたの番号知らなかったし』



静香叔母さんに聞いたらしい。
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