満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑
1 怪盗 glasses witch

1-Ⅰ

「おいマコ、あの足。結構いいカンジじゃね?」

黒岡 誠(くろおか まこと)は背後からかけられた友人の声を完璧にシカトして白い煙草の煙を吐き出した。

誠の頭の中にはイトーがまたアホな事を言っているとしかインプットされていないだろう。

「おい。マコ聞いてる?」

「ああ、聞いてる聞いてる。」

コイツのこの手の話は適当に流すのが一番…。

誠は一日に数度は発せられるイトーの言葉に適当に相槌をうった。

ったく、どうしてコンナのになっちまったんだか高校の時は女子と喋れなかった奴が…。

まぁ、そのおかげで彼女イナイ歴は18年で止まったらしいからよしとしとくか。

それに…。

誠はイトーに視線を向けた。

品のいいとは言えない派手なアロハシャツにハーフバンツ。

コンナのに引っ掛かる女がいるとはな。

ハァ、誠のため息は煙草の煙と共に空気に呑まれていった。

「何溜め息なんかついてんの?黒岡君。」

不意に声をかけられ誠は煙草をくわえたまま後ろを振り返った。
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