満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑
綾香は相変わらずウンウンと頷いている。

「それで?」

彩香の表情は曇りのない笑顔である。

…それでって…。

「単刀直入に言うよ。」

誠は胸ポケットから煙草とマッチを取り出した。

ハァとため息を吐き出しながら煙草をくわえた。

「誠。」

綾香が誠をジッと見つめて言った。

…ん?やっと話すのかな?

「誠、この部屋は禁煙」

……そっちか……。

誠は無言で煙草とマッチを胸ポケットにしまいこんだ。

「綾香ネェ、glasses witchって綾香ネェのことだろ?」

相変わらず綾香の表情には曇りがない。

「証拠は?」

綾香はクスリと笑う。

「そこにゴマンとある。」

誠は部屋の一角にある盗品に一度、目をやった。

「それにコイツと、」

誠に乗っかっている黒猫。

「それと、綾香ネェの腕に残っている傷跡。昨日コイツに引っ掻かれた傷だろ?」

誠は綾香の腕をジッと見つめて言った。

綾香は笑顔のまま、んー、と首をかしげる。

「やっぱり。バレてる?」
「そりゃもう、疑いようもない位に。」

……まだバレてないと思ってたのか?玄関でアンナこと言っときながら…。

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