満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑
「熱くないよ。」

綾香はフフっと笑った。

「私達が契約だけで使える魔法で出せるのは炎とか光、霧、水とか。まぁ、自然界の物ね。」

「大きさは大体手のひらに乗るくらいのサイズね。」

綾香はそう言いながら誠の正面に座った。

「それとそれらがなんであるか、何をするものかは自分次第。」

「この炎だって…。」

綾香はそう言い炎を誠に近づけた。

誠の目の前ではゴウゴウと炎が燃えている。しかし不思議とその炎から熱は感じられない。

「熱く、ない。」

「そう、これは熱くない炎。でも…。」

綾香は炎の上に紙をかざす、紙はゆっくりと焦げ始めやがて火がついた。

「物を燃やすことは出来る。」

紙はチリチリと小さな音を立てて燃えている。

…熱くないのに燃える炎?

はっきり言ってかなり道理に反している。

「熱くないのに燃えるってどうゆう原理だよ。」

誠がポツンと燃え上がる炎を見つめながら言った。

「原理なんか考えるだけ無駄よ。ここに在るのは熱くないけど燃える炎。そういう存在、概念よ。」

綾香は拳を作るように手を握り炎を消した。

「魔法は物事の概念、常識という枠を外す術。」

「普通の概念は足枷にしかならないわ。」
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